うつぶせ時の違和感
患者さんが、ベッドにうつぶせになる。
手をベッドの下にいれて、いつもの姿勢になる。
ん!? ちょっと違和感がある。
しかし、この時私は違和感が何であるか、気づくことが出来なかった。
まずは、腿の裏から、調整を始める。
久しぶりの来院なので、ちょっと筋肉は固めだ。
ここで、患者さんと会話をした。
「年末に向けて、忙しくなりますか?」
「そんなに、忙しくならないみたいですね~。」
たわいもない会話をしていると、何が違和感なのか、わかってしまった。
うつぶせに寝ている患者さんのお尻のところに、普通なら、ないものがあるのだ。
そう、患者さんの履いているステテコが後ろ前反対なのである。
「いや、待てよ。こういうデザインということもある。」
「最近の服装にはリバーシブルというものがあるらしい」
「ステテコにも、リバーシブル機能があるものが出てきたのかもしれない。(この場合、リバーシブルとは言わないが・・・)」
「前側を見てみないと、はっきりしたことは言えないぞ。」
一通り、後面部の調整を終えると、患者さんに仰向けになってもらう。
そこで、疑惑は確信に変わる。
さて、どうしたものか?
このことを話した方が良いのか、話さないで、何事もなく過ぎ去るのを待つのが良いのか?
いや、患者さんのメンツもかかっている。
もし、途中で、この患者さんが気づいてしまったら、恥ずかしい思いをさせてしまうのではないか?
でも、どう切り出したらよいだろう。
あれこれ悩んでいると、現実的な考えも浮かんでくる。
そもそも、ステテコを逆に履いていても、施術には影響を与えるものではない。
私から、話を振って、恥ずかしい思いをさせるより、
気づいたときに、「いや~、全然気づきませんでしたよ~」とやり過ごせばよいのだ。
そうだ、黙ってやり過ごそう!
いや、待てよ。
そもそも、私は知ってしまっている事実を「いや~、全然気づきませんでしたよ~」なんて、
初めて知ったような顔をすることができるのだろうか?(役者でもないのに)
いや、たぶんできないだろう。
だから、祈ってやり過ごすのが一番だ!
「どうか気づきませんように・・・」と、念仏を唱えるようにしながら、
患者さんの意識がステテコに向かわないように、注意しながら、施術をしましたとさ。